《MUMEI》

もうすぐ家に着くって時になって、

誰かがあたしを呼び止めた。





──あいつが。





──桐生光喜が。





「へー? 待ち伏せたぁやるじゃねーか」

「ごめん‥、体育館にいた時は先輩といたから──邪魔しないようにって──」

「で、何か用か?」

「──おめでとう。それから──ありがとう」

「ぇ」

「まだちゃんと言ってなかったから──」

「おめでとさん」

「‥ぁ‥、うん。ほんとにありがとう。じゃあ僕──」

「待ちな」

「?」

「‥気ぃ付けて帰れよ‥?」

「──うんっ」





嬉しそうに頷いて走ってく桐生。





何かひと周り、

デカくなったみたいな感じがした。

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