《MUMEI》

「先生……、猫が逃げてしまいました。」

いや、私が逃がしたのだ。


「問題無い。そのうち帰ってくるからね。」

もう、帰ってこないだろう。私は猫を奪ったから。


「先生は何故、[ぼく]を見てはくれないんですか?」


「峯君?」


「もう疲れました。……愛し合いませんか、いつもの通りに。」

私の体は、先生無しではいられない。


「冗談は止して呉れ。」

接吻は甘くする。
先生が逃げられないように。

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