《MUMEI》
ちびっこライバル
「どう?飾り付けは。」


美奈子先生は、その男の子に目線を合わせる様にしゃがむ。


「うん、順調だよ!だって、僕がんばってるもん。」

男の子は胸を張る。


「さすが翔太君!」


美奈子先生に褒められて、翔太と呼ばれた男の子は、照れくさそうにエヘヘと笑う。


その仕草に、僕は過去の自分の姿を見た。

きっとこの子も、美奈子先生の事が好きなんだ。


それがどんな形であれ、『好き』という事には変わりない。


そう思うと、子供相手でも、少しばかり嫉妬してしまう。


「先生、その男の人誰?」

さっき迄、照れ笑いしていた翔太君が僕を指差す。


「こんにちは!」


僕も美奈子先生と同じ様に、翔太君に目線を合わせた。

すると翔太君の目が、気のせいか、鋭くなった。


「もしかして、先生の彼氏なの…?」


「えっ!!?」


僕は、そのマセた発言に言葉を詰まらせる。
と同時に、心臓がドクンッと飛び跳ねた。


「アハハハハッ!!」


固まってしまった僕の変わりに答えたのは美奈子先生だ。


「違う違う!この人は順平君っていって、翔太君のお兄ちゃんだよ。」


「ふ〜ん…。」


ここで一番最初に教わる事。
それは、ここで少しでも過ごした子供達は、皆兄弟だということ。


だから、僕はお兄ちゃんと呼ばれるのだ。


それがルールなんだけど、この翔太君には関係ないみたいで…


「初めまして、順平。」


呼び捨てにされた上に、冷たくあしらわれてしまった。

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