《MUMEI》

「エイジくん!」

「エイジさん!」

タイヤを鳴らしながら急発進した車の中で、体を大きく傾けながら、将と私が同時に叫んだ。

「将」

エイジくんが、低いよく通る声でゆっくり言う。

「はい」

「あいつら見てただろう。気付かなかったかお前」

「あ…すいません」

将がシュンとなる。

「エイジくん、将、どういう事?あいつらって誰?」

私が聞いても二人は答えてくれない。

「何があるの?修くんも何も言ってくれないけど、私わかるよ?どこかのグループみたいなのと修くん達、また喧嘩してるんでしょ?前にもこんな事あったよ?その度に私、いつも行動が制限される!嫌だよこんなの変でしょ?」

私は一気にまくし立てた。理由がわかればまだしも、誰も何も言ってくれなくて、聞いても「マズイから」とか「修さんに口止めされてる」とかで、ただ行動を制限されたりどこに行くにも修くんの仲間がついてきたりする。

「エイジくん」

エイジくんは答えない。

「将」

将は顔を上げる。

「由佳…」

「将!」

何か言いかけた将をエイジくんが制すると、また下を向いてしまった。

「もういいよ!」

信号待ちで停まった時に、ロックを外し私は思い切って外へ出た。

「由佳!」

将の声がするけど、振り向かない。そのまま来た方向に戻るように走る。

途中で細い道に入る。
明治通りを右折して更に左折したから多分、このあたりは青山一丁目だ。

路地を何度か曲がってから私は足を止めた。

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