《MUMEI》

「ふーん?」

「だから『有り難う』と言ったんだ」

「そりゃどーも」

珠季は照れくさそうな反応をした。

風に靡く彼女の髪は

まるで──

何か神聖なもののようで。

薄暗い中に浮かび上がる彼女の姿は

精霊のように見えた。

毎回思うんだけど──

珠季って夜の方が大人しいんじゃないか‥?

勿論

夜も結構お喋りだけど‥

夜は静かだ。

昼間は

あまりこうして彼女の横顔に見とれるなんて事は無いし──。

「‥ん‥?」

「別に」

「───────」

「──そんじゃ、帰りますかぁ」

「送って行くよ。もう暗いから」

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