《MUMEI》 真司の本音「何で嘘なんだよ」 少しすねたように真司は言った。 「普通、好きでも無いのに付き合わないだろ?」 真司らしくない、歯切れの悪い口調だった。 「だって、… …してくれなかった」 長谷川は赤くなりながら、尚も反論した。 「そ、それは…っ、祐也」 「何だ?」 「いつまでここにいるんだよ」 「…は?」 「普通、気をつかうだろ、こういう時は」 「話の邪魔はしてないけど?」 (なんなんだ一体) 真司が何を言いたいのか俺にはさっぱりわからなかった。 「だから! 気を利かせて二人きりにしろよ、こういう時は!」 「お、おい!」 真司がグイグイと俺を押し出そうとするから、俺は焦った。 「鍵は後で返すから!」 「大丈夫なのか?」 「…多分」 「やっぱり残…」 「大丈夫です、田中先輩」 立ち止まる俺に、長谷川が声をかけた。 (二人がそう言うのなら) 俺は大人しく部室を出た。 真司が戻ってきたのは昼休みが終わる直前だった。 『放課後話せよ』 俺が目で訴えると、真司は少し赤くなりながら頷いた。 前へ |次へ |
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