《MUMEI》
理解できないすれ違い
「何で皆思った事言わないんだろう?」


どれだけ好きとか


愛してるとか


大切に想ってるとか


(言えば言うほど相手は喜ぶのに)


《場合によっては重くなる》

「でもさ、言わないで後悔するよりいいだろ?
それに、本気で好きな人には伝えたいし、お互い両想いなら、尚更だろ?」


だから、俺はいつだって伝えた。


旦那様が喜んでくれたから。


《お前の愛情表現はいつだってまっすぐだからな。

…羨ましい程に》

「『羨ましい』!? 忍が? 俺を?」


(珍しい!)


《あぁ、羨ましいよ。お前のバカみたいに、ウザイくらいに、重いくらいに、しつこいくらいにまっすぐ自分の気持ちを

好きだと、愛してると言っていた所が》

「…羨ましいって、嘘だろ」

《いやいや。俺にはとてもできない》

「絶対嘘だろ!」


忍は笑っていた。


電話だから、いつものあの馬鹿にした表情に違いないと俺は決めつけて


忍がいくら『違う。本当に羨ましい』と言っても


俺は信じなかった。


そして、俺は両想いの人間がすれ違うという気持ちもさっぱり理解できないままだった。

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