《MUMEI》
なごり雪の中で
その日は、三月だというのに雪が舞った。


なごり雪だと、志貴が教えてくれた。


自分との別れを空も惜しんでくれていると


悪戯っぽく、祐が笑いながら言った。


そんな、雪の中


吾妻高校の卒業式が行われ


祐・希先輩・葛西先輩


ストーカーの時、お世話になった大蔵先輩


そして、常に笑顔だった演劇部部長が


卒業、した。


吾妻高校はブレザーだから、学ランのような第二ボタンは存在しない。


かわりに、ネクタイがそれにあたるらしく、人気のある三年生は、ネクタイをしていなかった。


かわりに、普段リボンタイをしている三年女子の中に、彼氏からもらったネクタイをしている人が何人かいた。


「卒業、おめでとうございます」

「ありがとう。部活頑張ってね」


俺が花束を渡した部長もその一人で


部長が交換した相手は…


大蔵先輩だった。


(まさか二人が付き合ってたなんて)


かなり、驚いた。


それから、俺は、お互いネクタイを交換したという祐と葛西先輩にも、花束を渡した。


祐には『絶対くれ』と言われていたし、だったら葛西先輩にもあげないと悪いと思っての行動だった。

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