《MUMEI》
繰り返される悲劇
.


……さてと。



わたしはすくっと立ち上がり、まだしゃがんでいる彼の顔を見て、ニッコリする。

「それじゃ、わたしはこれで」

言い放ち、くるりと身を翻すと、わたしは彼を残してスタスタとその場から歩きはじめた。

この際、このひとにパンツを見られたことは、犬に噛まれたとおもって忘れてやろう。

あまり彼に構っていると、ロクなことがなさそうだ。


わたしは優雅な仕種で、肩にかかる髪を撫でた。サラリ…と繊細な音を立てて、髪の毛が肩を滑り落ちていく。また、みんなの視線がわたしにくぎづけになった。


いい気分!


ひとりでニヤニヤしていた。




その瞬間。




「ヨシナカさんっ!!」




だれかを呼ぶ男のひとの声が聞こえ、なんだろうとおもい、わたしはゆっくり振り返った。

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