《MUMEI》 . ヒョロ男は、わたしの顔をちらっと見遣って、ヒューと口笛をふいた。 「すっげー、美人。なに?朝からナンパ?」 隅に置けないねぇ、とニヤニヤしてつづけたが、彼−−《義仲》と呼ばれた男の子は、ヒョロ男に興味がないらしく、あっさり無視して、ねぇねぇ、と言いながら、わたしの肩をチョンチョンと、人差し指でつつく。 「あんた、名前なんて言うの?」 ちょっかいを出してくる始末。もう、手に負えない。 わたしは無視を決め込んだ。 義仲はしつこくわたしをつっついて、ねぇってば〜、と話しかけてくる。 「俺、櫻井 義仲っていうの。あんたは?」 それでも、なにも答えないわたしを見て、ヒョロ男は義仲に向き直り、クスッと笑う。 「残念でした。お呼びでないってさ」 その通り! あんたたちなんか、全然、まったくもってお呼びじゃないんだ。気安く声をかけないでよ! . 前へ |次へ |
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