《MUMEI》

すると義仲は、ヒョロ男をギロッと睨み、昌平は黙ってろ、と低い声で言った。

おもわず、わたしがドキリとする。今までの伸びやかな声とは打って変わって、すごみのある抑揚だった。

しかし、《昌平》と呼ばれたヒョロ男は、慣れているのか、外国人のように肩を竦めるようなジェスチャーをして、ハイハイ、とため息まじりに呟いた。

「わかったよ。邪魔モノは退散しま〜す」

陽気な声でそう言い残し、昌平はくるっと踵を返すと、わたしたちから離れて行った。

昌平がいなくなると義仲は、あのさぁ〜と気の抜けた声で言った。

「あんた、外部生でしょ?見たことないもん」

わたしは答えない。義仲はつづける。

「外部生ってことは、なんか特技あるの?」

ひたすら沈黙。意地でも答えるつもりはなかった。

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