《MUMEI》

義仲は俯いているわたしの顔を覗き込み、さらに言う。

「ねぇ、聞いてんだけど……」


そのとき、おそらく教師とおもわれる、おじいちゃんが出席簿を片手に、のろのろと教室へ入って来た。

「はい、みなさ〜ん、生徒番号順に席に着いてくださ〜い」

予想通りのスローなテンポで呟きながら教壇に立つ。クラスメートたちは、ダラダラと席に戻った。

全員が席に着いたのを確認して、おじいちゃんは話しはじめる。

「1年E組担任の後藤です。担当教科は古典です。今日から一年間、わたしと一緒に青春を謳歌しましょうね〜」


青春を、謳歌。


一瞬、クラスが静まり返る。


……おじいちゃんが、なに言ってんの。


みんな、教壇でよぼよぼしているおじいちゃんを冷めた目で見つめた。

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