《MUMEI》

「──お待たせ、買って来たよ」

「ん、あんがと‥」

缶を受け取った珠季の目が

点になる。

「何でコーヒー牛乳‥?」

「君の『何でもいい』はこれしか無いからね。それから──もう1種類別なのも買ってみたんだ」

「‥何でそんな得意げなんだよ」

「ん? そうか?」

わざと

惚けてみたら。

「そーだっつの」

突っ込む真似をして

珠季が言った。

「まぁいーや」

プルタブを開ける音。

彼女は両手で包むように缶を持つと

1口飲んで

チラリと僕の方を見る。

「オマエは飲まねーの?」

僕がまだプルタブを開けていない事に気付いて

そう訊いてきた。

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