《MUMEI》

「ほら──今はどうだ?」

「ん‥‥‥」

珠季は

一瞬動きを止めた。

不安も

恐怖感もなくなっている事を確認して

珠季は頷いた。

「なくなってら」

「──ほらね、言った通りだっただろう?」

「だから何でそんなに得意げなんだか‥」

苦笑混じりに言って

彼女は缶を口に近付ける。

中身を一気に飲み干すと──

ポイッと缶を屑籠には捨てずに地面に放った。

「おい、何をしているんだ‥? ちゃんと屑籠に──」

入れないと──

そう言うより先に。

珠季はその空き缶を

勢い良く蹴り上げた。

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