《MUMEI》 終章3 夕焼けの中を【緋色side】「おーい、帰んぞ光喜ー」 「ぁ‥うんっ」 絵の具やらスケッチブックやらを、 慌てて片付ける光喜。 鞄を肩にかけて、 美術室の電気を消す。 「ごめんね、いつも待っててもらってばかりで──」 「別に待ってた訳じゃねーけど? たまたまあたしもこの時間帯に終わるってだけだから」 だから、 せっかくだし一緒に帰ろうかなって。 「まだ結構明るいね──」 「ぁぁ‥」 「緋色みたいだよね、あの空の色」 「またかよ──」 「あの色──まだ嫌い?」 「いんや、別に嫌いって訳じゃねーけど。──行こーぜ、暗くなっちまうと面倒だし」 「あっ、待ってよ緋色ー!」 光喜が、 追っかけてくる。 「しょーがねな‥、ほら」 あたしよりちょっとだけデカい手を、 引っ張ってやる。 2人で、 夕焼けの中を走った。 ちょっと後ろを振り向いたら、 夜の空が迫ってきてて── 小さな星が、 チカチカ光ってた。 前へ |次へ |
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