《MUMEI》

わたしがなにか言ってやろうとしたとき、おじいちゃんの死にそうなくらい、弱々しい声が流れてきた。

「片倉さん?片倉 璃子さん?」

わたしはハッとする。そうだった。点呼の途中だった。

「片倉 璃子さ〜ん、いないのですか?」

キョロキョロとクラス中を見回して、おじいちゃんが繰り返しわたしの名前を呼ぶ。

早く返事をしないと欠席にされてしまう。

あわてて口を開き、返事をする。


−−−その、まえに。



「カタクリ粉ォ?」



隣のアホ男子が、素っ頓狂な声をあげた。

わたしの動きがピタリと止まる。まるで魔法で石にされてしまったように。

クラスのみんなが、わたしたちに注目する。女の子たちは、わたしの美しさへのヒガミもあいまってか、失笑していた。

義仲は硬直しているわたしの顔を、まじまじと見つめながら言った。


「あんた、カタクリ粉っていうの?」


変な名前だね…と、要らん言葉までをも付け足す。



−−−ブチッ。



瞬間、ついに、わたしの中でなにかが切れた。


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