《MUMEI》

「──有り難う、君が教えてくれなかったら──今頃危なかったかも知れないね」

レストランを後にした僕達。

元来た道を戻りながら──

他愛もない会話に花を咲かせていた。

「オマエ時々忘れっから気が抜けねーんだよな‥」

「でも──君がいるから心配はいらないね」

「いっつも一緒にいるって訳じゃねーだろ‥?」

「そうだけど──でも、僕は君といない時は家にいる訳だから」

「そっか、オマエはアタシとじゃねーとあんまり外出ないんだったな。‥?」

「ぇ」

「何だよジロジロ──」

「かッ‥勘違いは止してくれ」

確かに

君を見つめてはいた。

けれど──

ただ見つめていたというだけなんだ。

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