《MUMEI》
「…そうですか?、あ、惇オシッコ大丈夫か?」
「…うん、まだ平気…」
−−−兄貴…
お願いだから助かって…
仁…
兄貴を最後まで守って……。
両手を組んで目を閉じて祈る。
お願いします
神様が本当にいるのかどうか知らないけど、
もし本当にいるなら
どうか兄貴を
助けて下さい
▽
飛ばしまくった車はあっという間にインターを降り、ナビに従って一般道を進み出した。
あまり見慣れない景色。
愛知県出身だけど名古屋以外あまりわからないから、例えナビに誘導されているとはいえ、愛知県を走れる裕斗に尊敬を感じてしまう。
…つうか、頼もしい。
緊張の中病院の入口で車を降りるとそこに親父が待っていた。
泣き腫らした目
憔悴しきった顔
親父のその様子で、まだどこか夢の中の出来事であってほしいと思ってしまう自己逃避な気持ちが
一気に粉砕した。
車を駐車場に止めて駆け寄る裕斗と平山さん。
三人は無言のまま深く会釈し、俺はじっと固まったままその様子を見ていた。
「惇、行こう」
親父は俺の肩に…手をかけた。
本当に、本当に久しぶりに会う親父……
あんなに威厳があったのに…
大きかったのに…
いつの間にか俺よりも小さくなって、
年老いている…。
「はい」
俺は親父の肩に腕を回し、震える体を支えた。
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