《MUMEI》

背骨が軋る。
肩甲骨が痛んだ。

僕は自由だ。


光の粒子が刺さる。
基地は僕等を塵にする仕掛になっていたが、処世術は用意されていたのだ。
伏せたイツバの背中に羽が生えた。

正しくは羽に似た骨組みに巻き付いた粘質の翼力、羽の粘質は頭上に通過する光線を捕まえ、内部で弾けた、銃口に物が詰まり暴発するように。
エレナ曹長のクロバに自動防護機能が付属されていなければ跡形も無くなっていただろう。
それ程、僕等の力は異質で危ういものだった。
霧散した基地の天井には灰色の空が浮かんでいた、鉄の糟や爆薬の煙が上がり、曇天と化している。

頭蓋の揺れは激しく、曹長以外は高揚感が抑えきれない、悪酔いのする薬物のようだ。

戦争の士気を上げるためにそのような薬を公認している国家もあるくらいだ。
高ぶる神経の中で常人の何倍も身体能力が上がり、殺戮兵器と化した力で敵を滅殺する。

煙幕から、影が見えた。









   
      殺す……

身体が素早く反応し、取り囲んだ。

煙の中からは見たことも無い、イツバやクロバにも似た装甲の兵器が現れる。

イツバやクロバが鳥を模したならその兵器は蜘蛛のように八本の節足を持っていた。
中枢は特殊な素材を使っているのか、研かれた刃のように美しい輝きを放つ球体だ。


黒く光る球体から、僅かに生体反応が出ている。
同じものであると確信した。

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