《MUMEI》

翔太が麻倉を抜こうとした瞬間、


その時すでに、


翔太はパスを出していた。


翔太は麻倉を、


『左に抜こうとした。』


反応が遅れたとはいえ、


翔太とは鏡の位置にいた麻倉は、


必然的に右を見る。


その瞬間、


翔太は肘を使い猪狩にパスを回していた。


麻倉はパスが出たことすら気付かず、


ボールを持たない翔太に付いていたのだ。


左を守る秀皇大学の選手たちは、


麻倉同様そのパスに気付くことができなかった。


翔太とディフェンスの間に、


『麻倉という死角があったから。』




















「ナイッシュー!!」


猪狩のシュートが決まる。


前半21分。


5対5。

















翔太が肘を使ったパスはエルボーパス。


本来バスケのパスとして使われるパスだ。


なぜ…?


翔太がこんな技術を用いることが出来たのか…


麻倉には理解できるはずもなかった。

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