《MUMEI》

「……二週間前に弱っているとこを拾ったんだ。」

兄さんはぐったりしている天狗に包帯を放る。
足元には血の付いた包帯の切れ端が散乱していた。


「病院は?」

兄さんは首を振って否定した。


「見つかりたくないそうだ、それに目が駄目になっている。火傷で口がきけず病院には頑なに行きたがらない。」

顔面を包帯で覆い、息をするたび揺れる包帯の断片が不気味だ。


「……一人でこの人を看てたの?」


「モモが手当していた。まあ、だから千石も知っているだろうな。」

俺にはまだモモ=千石の図式は確立されていなくて聞いただけでは疑問しか浮かばなかった。


「妖精みたいに可愛くないね。」

火傷で包帯塗れなんてまるでミイラだ。


「妖怪だからな。お前も殺されるかもしれない。」

兄さんは俺の怯える様を見て喜んだ。

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