《MUMEI》
超不機嫌な忍
《方向音痴は父親譲りか…》


(何でそんなに機嫌悪いんだよ!)


エイミーとその兄弟の件を報告してから、忍の声はかなり低くなっていた。


「し、忍。もしかして、エイミーの父親と、昔何かあったのか?」


忍が不機嫌になるとしたら、昔会ったというエイミーの父親関連だと思った。


《お前には関係無い》


(あったんだな!)


未だに忍が怒るような何かがあったのだと、俺は確信した。


《とにかくその三人には近付くな》

「エイミーは無理」

《… …何だと?》


(ま、まだ下がるのか!)


忍の声に怯えながら、俺は理由を説明した。


「だって、エイミー、…『赤ずきん』役、だから…」


ずっと秘密だった主役。


それがエイミーだと、俺は今日頼から知らされたのだ。


「俺、演劇部の部長だし…」

《では、できるだけ関わるな》

「努力は、するけど… 理由は?」

《そんなの決まってる》


忍はきっぱりと言った。


《その娘の父親が、旦那様を傷付けたからだ》


その一言に


俺は、言葉を失った。


更に、忍は言葉を続けた。


衝撃的な、言葉を。

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