《MUMEI》
移動
「ドライブ〜ドライブ〜♪れっつご〜。」
アクセルを踏む。

がん!

「いけね、DとR間違えた。」
ガレージ後方に思いきりぶつけてしまった。
「降ろしてー!こんなところで死にたくないよー!」
「降りたら結局ヤツラに食われるぞ。諦めろ。」
そうこうしてるうちに道路に出た。町を貫いている国道だ。
「やはは、なんとかなるもんだな。」
「対物事故が7回くらいと対ゾンビ事故が12回くらいあったけどね……。」
親父の4WDは見る影もなくなっていた。大切にしてたのにご愁傷様。

「それより………ギャグじゃないんだね…。」
周りを見てタカが言う。
「……ああ。」

この町はやはりゾンビで埋まっていた。
道路には車が乗り捨てられ、いくつかの住宅からは煙があがっている。そしてあまねく場所にゾンビが酔歩していた。

揺るがしがたい現実だった。

今オレ達は孤立している。水道、ガス、電気、地上波などのライフラインは確立しているにも関わらずこちらからの通信はまるで出来ない。携帯は当然の事として、ネット、衛星電話、アマチュア無線、発煙筒まで試してみたが応答は無かった。

テレビでは風山町のことなどまるで取り上げようとせず、芸能人の息子の薬物事件を嬉々として取り上げていた。……まるで何も知らないように。

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