《MUMEI》 「ああ。」 爽快に身を翻して、その場を速足で立ち去った。 左折したところで、右側にある壁を思い切り殴る。 何やってんねや俺!! 何回も何回も壁を殴る。 ちゃうねん。 あんな言葉言いたかったんちゃうねん!! どうしていつもっ! いつも俺はっ!! 堪えていた涙が溢れ出る。 優しい言葉一つもかけられないんだ? 何であんな言い方しか出来ないんだ?! 手はうっすらと、血で染まっていた。 傷口からジンジンと痛む、鈍い痛み。 だけど胸の辺りの方が、よりズキズキと痛んだ。 なんやねん、この痛み。 こんな感覚初めてや。 胸を抑えて、その場に崩れ落ちる。 地面は俺の血と涙で染まり、広がって行た。 くそっ泣きやめよ!! そんな思いと比例するかのように、涙はどんどん溢れてくる。 ああ、そうだ。 そうだったんだ。 この痛み………。 胸が痛い理由。 涙が止まらない訳。 “友達を失った” 俺はまた、あの時と同じように……。 “一人”なんだ。 前へ |次へ |
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