《MUMEI》

──始まった競争。

余程負けたくないのか

珠季はいつもよりスピードが速くなっている。

けれど──

空腹からか次第に速度が落ち出した。

「───────」

僕は階段を駆け上がりながら

時々珠季を振り返っていた。

「大丈夫かい?」

「ぅ‥うっせーや、つーか‥その余裕な感じがムカつく‥」

息切れ気味になりながら呟いて

珠季も階段に到達した。

僕は

1階分程先を走っていたんだけど‥

急に珠季の足音が止んで立ち止まった。

「珠季‥?」

手摺から身を乗り出すと。

珠季はそこにいなかった。

ぃゃ‥

珠季は僕より先にいた‥

という方が正しい。

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