《MUMEI》
エピローグ
「──おーいっ、早く来いよーっ」

──僕を呼ぶ声。

「置いてくぞー?」

「待ってくれ、今──、!?」

「オイオイ‥コケんなよ‥?」

「ぃ‥今のは躓いただけだ」

僕らは栄花高校を卒業して

今はそれぞれ大学と短大に通っている。

前に比べて会う回数は減ったけれど──

電話はメールは毎日欠かさない。

どんなに忙しくてもね。

「ったく‥せっかく久々のデートだってのに」

「焦る事無いよ、時間はまだたっぷりあるんだ──ゆっくり楽しもう」

「‥へいへい──」

珠季の腕が

僕の腕に絡んでくる。

久し振りだな──

こんな風に2人で並んで歩くのは。

「──珠季」

「‥ん」

「呼んでみたかっただけさ」

「ンだよそれ‥」

「──さぁ、次は何処へ?」

「どこでもいーけど」

その返事を聞いて

僕はひと先ず

ただ歩く事にした。

──恋に相性?

関係ない。

相性が良くても悪くても──

僕らがお互いを好きだという事に変わりは無い。

だから──

只楽しもうとそう決めた。

君と過ごす時間を

精一杯楽しもうと。

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