《MUMEI》

俺に体を預ける様に歩く親父。




きっと今まで一番堪えてたんだろう。お袋を支えていたんだろう。





…しっかりしなきゃ。



現実をみて、
現実をみて……




強くなれ、俺。















ぺらぺらな青い服を纏い、俺は親父とICUに入った。






やたら広い空間にたくさんのベッド。


そこにたくさんのモニターや機材があって、医師や看護師がベッドの数だけいる。


俺と親父は看護師に誘導されるがまま、他の患者を尻目に奥まで突き進むと、




一番端に、お袋がいた。






お袋は俺を見つけた途端椅子から立ち上がり





俺にしがみついてきた。





俺よりも小さくて、とても華奢な体が、






震えて泣いていた。






強く抱きしめながら兄貴を見る。








俺がしていたビニールパック点滴とは違う、注射器のお化けみたいな容器から体に入れられる点滴。



天井から吊されているモニターには、赤、青、黄色の線や数字が表示され、兄貴の血圧や、何かを表示している。





兄貴の口には掃除機のホースみたいなものがくわえさせられていて、上半身は裸で薄いシーツのようなものだけが胸の辺りから、かけられていた。




たくさんの管。










血の気のない、白い顔。

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