《MUMEI》
俺に体を預ける様に歩く親父。
きっと今まで一番堪えてたんだろう。お袋を支えていたんだろう。
…しっかりしなきゃ。
現実をみて、
現実をみて……
強くなれ、俺。
▽
ぺらぺらな青い服を纏い、俺は親父とICUに入った。
やたら広い空間にたくさんのベッド。
そこにたくさんのモニターや機材があって、医師や看護師がベッドの数だけいる。
俺と親父は看護師に誘導されるがまま、他の患者を尻目に奥まで突き進むと、
一番端に、お袋がいた。
お袋は俺を見つけた途端椅子から立ち上がり
俺にしがみついてきた。
俺よりも小さくて、とても華奢な体が、
震えて泣いていた。
強く抱きしめながら兄貴を見る。
俺がしていたビニールパック点滴とは違う、注射器のお化けみたいな容器から体に入れられる点滴。
天井から吊されているモニターには、赤、青、黄色の線や数字が表示され、兄貴の血圧や、何かを表示している。
兄貴の口には掃除機のホースみたいなものがくわえさせられていて、上半身は裸で薄いシーツのようなものだけが胸の辺りから、かけられていた。
たくさんの管。
血の気のない、白い顔。
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