《MUMEI》

「ぉ‥お嬢様は確かに強いけどッ‥でも──俺が守って差し上げたくて‥」

「そのお嬢様に負けているというのに──よくそんな大層な口が聞けるな」

「こッ‥これから強く‥」

「色々と強気な事を並べ立てているけど──実際、君はお嬢様に何をして差し上げたんだい‥?」

「‥ぇ」

「紅茶を淹れておもてなしするだけが──身の回りのお世話を司るだけが執事じゃない。──君は何も分かっていないんだ。執事の事も‥お嬢様の事も‥何1つね」

「ッ‥‥‥」

「君はここにいるべきじゃない。──今は分からなくてもじき知る事になる‥‥‥」

「──そうだよな」

「‥何‥?」

「またいつ危なくなんないとも限らないし──下手すりゃ一生執事の端くれかも知れないし‥。でも俺──やっぱ落ち零れのままじゃいたくないから」

「──危険な賭けだね」

「賭けっつーか──」

「‥?」

「俺とお嬢様の真剣勝負だから」

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