《MUMEI》

「推理小説は面白い!」
小一時間黙々と読書していた友人の川田はいきなりそう言うと私の手元に読み終えたばかりの文庫を差し出した。

「おまえも読め!くだらんマンガより十二分に楽しめるぞ!!」

私にまくし立てたあと彼は紺の上着のポケットからタバコを取出し吸いはじめた。そしてポツリとつぶやいた。

「殺人事件起きないかな……」

起きるわけがない、私は殺人事件なんぞテレビの向こう側の対岸の火事位にしか思うことができなかった。
川田がなにやら閃いたような顔つきで話し掛けてきた。

「ちょっとしたゲームをしよう。」


そう言うと私にトイレに行ってこいと指図され渋々用を足しに行った。

戻ると川田は死んでいた。
私の部屋で…
壁には彼の血で書かれたであろう私の名前が…

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