《MUMEI》

「こっちに来てはいけません!」

日が暮れ出してて、逃げ出した後ろ姿しか見えなかった。


「だって、目が、いいよ、追わないで!」

左目を押さえながら追いかけようとする安西の背中にしがみついた。


「でも!」


「でももへったくれもあるか!まずは病院だ!」

押さえていた手を引き剥がす。どうやら瞼が切れただけらしい……血が酷い。
取りあえず病院だ。


「……自分の身の心配より他人ですか。刃物を持ってましたよ?」

刃物……この間の電柱の痴漢……?


「病院だよ、まずは。」

今はまだ、意識を乱したくない。

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