《MUMEI》 ──2時限目が終わった後。 教室から出て行った菜畑君を追って、私は廊下を走っていた。 「黄羽様っ!」 「?」 菜畑君が、私を振り返った。 ‥でも。 「君は‥?」 「此花サクヤ‥、あの──黄羽様、私‥」 「‥人違いだ」 「ぇ」 ‥冷たい、眼差し。 「誰だ‥? そのコノハサマって」 「‥黄羽‥様‥?」 菜畑君‥前世の記憶がないんだ‥。 「サクヤ、ほんとに菜畑君なの? コノハ様って‥」 「うん、ほんと‥」 あの目が、姿が、あの男子があの人だと‥私に確信させた。 前へ |次へ |
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