《MUMEI》

わたしはハッとして、両手で鼻をおおう。

「へ、平気ですよ!鼻血くらい!!すぐ止まりますって!」

全然平気じゃないが、とりあえずそう言ってみた。しかし、わたしの指の隙間からどくどくと赤い血が流れていき、一向に止まる気配はない。

松本先輩は首を横に振り、ハンカチをわたしに押し付けた。

「いいから、使ってよ」

「ダメですよ!!ハンカチ、汚れちゃう!」


血って洗っても落ちないんだよ!!


わたしが必死に首を横に振ると、彼は血に濡れたわたしの手をとり、無理やりハンカチを握らせた。

「安物だから、平気。使い終わったら、捨てていいし」

わたしがなにも言えずにいると、松本先輩は、医務室行こうか、と提案してきた。

「ゆっくり休んだ方がいいよ。顔も洗いたいでしょ?」

わたしは戸惑いながらも頷いた。確かに、このままでは人前に出られない。

「そうします…ハンカチ、ありがとうございました」

失礼します…と呟き、力無くよろよろと立ち上がる。


サイテー…………。


鼻血って……マジありえない。


.

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