《MUMEI》

オッサンは、松本先輩に向き直り、言った。

「…コイツは預かる。おまえはもう戻れ」

そっけなく言うと、松本先輩はまた頭を下げた。

「よろしくお願いします」

松本先輩は、わたしの顔を見て、ほほ笑んだ。

「見た目あんなでも、渡辺先生は優しいひとだから、安心して休みなよ」

わたしはハンカチで鼻を押さえながら頷いた。

「なんか、メーワクばっかりかけてしまって…」

しおらしさを演じて、口ごもると松本先輩は優しく言った。

「気にしないで。僕は当然のことをしただけなんだから」

それじゃ、と爽やかな声で別れを告げ、先輩は医務室を出て行った。




………。

……………ふぅ〜〜。



安堵のため息をもらし、額の汗を拭った。



なんとか上手く、切り抜けたけれど……。


しかし、マズったわね………。

鼻血か。

イタイ。イタすぎる……!!


どうやって、この羞恥を挽回するか……。




ギリッと親指の爪を噛んだ。

このままでは、世界的な美少女のわたしの名前に、キズがついてしまうわっ!!


.

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