《MUMEI》
柊凛
ドアの前にいたゾンビをハンマーで思いきりなぐりつけた
ゴッ
そんな音だった。彼の人生の最期はそんな飾り気のない粗雑な一音で終わった。
ゾンビは頭をつぶされ、声もあげることなく倒れた。そして三度と蘇ることはなかった。
初めて、殺した。これが人を殺す感触なのか。
いや、ヤツラは人ではない。
……そう思わないと、思い込まないと、気が狂いそうだ。
「すまないな、おっさん。中に居るのはオレの仲間なんだ。」
見ず知らずの彼に謝罪とも言い訳ともつかない言葉をかける。
「……ケン。」
後から来たタカが心配そうな顔でオレを見た。
「オーライ、さあ、お姫様を迎えに行こうかい。」
平常心を取り戻す。オレがこんな顔してたらリンが不安になるだろう。
「…うん。」
「おーい、りーん、遊びに来たぞ〜。」
ドアを叩きながら呼びかける。
「…………」
反応なし
「集金でーす。見てなくてもテレビがあると払わないとだめなんですよー。」
「…………」
反応なし
「闇金ナメんな!とんずらがきく世界やないねんぞ!」
「…………」
反応なし
「世界の声、パナウェーブが聞こえませんか?」
「…………そのアホな発言、本当にケンなの?」
ドアからリンが顔を出した。
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