《MUMEI》

考えこんでいるわたしの背中に、渡辺のオッサンが声をかけてきた。

「オイ!おまえ、ボケっとしてんな!!ジャマだ!」



………チッ!

このオヤジ、態度デカすぎ。(←ヒトのこと言えない…)


確か松本先輩が、《ワタナベ》って呼んでたな。
コワモテだし、感じワルイし。


………ま、いいや。


保健医といえど、所詮はオトコ!!


わたしの、超人的なこの美貌で、亀○兄弟も真っ青な、ノックアウト&KO勝ち間違いなしよ!!


………見てなさい!

わたしの下僕にしてやるんだからっ!!



わたしは怒りをグッとこらえて、自慢のロングヘアーをサラリとかきあげた。渡辺先生を見つめて、儚くほほ笑む。

「…ごめんなさい、先生。ちょっと立ちくらみがして………あっ……」

ふらりとよろめいて見せた。

わざと制服の隙間から、わたしの白くて華奢な鎖骨が、チラリとオッサンに見えるようにして。

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