《MUMEI》 渡辺のオッサンは、シケモクを口にくわえたまま、サングラス越しにわたしの顔をじーっと見つめている。 わたしはニヤリ…とほくそ笑んだ。 ……どーだ、この演技力っ!!このチラリズムッ!! だいたいのオトコが、これでわたしのトリコに……。 ………しかし。 オッサンは、ふーっとケムリを吐きながら、面倒臭そうに言った。 「ガキのくせに、色気づくなよ。キモいな」 ……………はぁっ!? キモい!?キモいですって!? 「どこでそんなもん、覚えてくるんだか…末恐ろしいぜ」 やれやれ……、とオッサンはシケモクを灰皿の中でもみ消した。ペンを握り、デスクの上に開きっぱなしだったノートを引き寄せる。 「どうでもいいから、クラスと名前言え」 「……え?」 わたしがぽかんとしていると、渡辺先生はギロッと睨みつけて、クラスと名前!と押し殺すような野太い声で繰り返した。 前へ |次へ |
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