《MUMEI》

わたしはとりあえず気分を変えようと、渡辺先生からタオルを借りて、洗面台で顔を洗った。

キュッと蛇口をひねり、水を止める。

ふわふわのタオルで顔を優しく拭きながら、ちらっと背後を見遣った。

義仲と渡辺先生は椅子に座って話をしていた。正確に言えば、デスクで仕事をしている先生に、義仲がチョッカイを出しているのだ。



「ナベちゃん、こんど一緒に行こうよ〜。息抜き、息抜き!」

「《ナベちゃん》とか呼ぶな。ウザい」

「ねー、ねー。カワイイ子揃ってるから〜」

「未成年がキャバクラに教師を誘うなッ!!客引きか!!」



わたしはため息をつく。めまいすらした。

ホントにバカか…あいつ。


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