《MUMEI》

トボトボと二人のもとへ近寄ると、先に義仲が気づいた。

「ナベちゃんから聞いた。災難だったね〜。鼻血、吹いたんだって?」

言いながら、こらえきれずブッ!と吹き出した。

「やっべー!見たかった!!リアルに!」

ギャハハと笑う義仲を見て、わたしの頬がヒクッと痙攣する。

渡辺先生はタオルを受け取ると、わたしを見上げ、鼻血は止まったみたいだな…と呟く。

「それじゃ、さっさと教室戻れ」

世話かけんなよ!とクギを刺される。わたしは力無くうなだれた。

「ハイ…どーも、すんませんでしたぁ」

低い声で呟きながら、医務室から出て行こうとすると、ちょっと待て!と呼び止められた。
げっそりした顔で振り返ると、渡辺先生は義仲を指差して言った。

「忘れものだ!」

こんなヒドイもん置いていくな!と付け足した。義仲は先生に、ひでーな〜と笑い飛ばしながら、わたしを見た。

「一緒に帰ろーぜ、璃子ちゃん」

ヒラヒラと手を振って見せた。





……このひとは疫病神ですか?





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