《MUMEI》

「──菜畑君」

「‥何だ、君か」

「あのっ、私──」

「‥?」

「訊いて欲しい事があるの」

「‥君の話を聞く義理は無い筈だが」

「訊いて欲しいの。少しでもいいから‥」

「‥断る」

「どうして‥?」

「僕は‥君が捜している人じゃない」

「‥違うよ、菜畑君は──」

「僕の記憶の中に‥君はいない」

「‥っ」





 心が、チクリと痛んだ。




 私は、覚えているのに。




 はっきりと、覚えているのに。





「‥‥‥‥‥‥‥」

「もう分かっただろう。君は勘違いをして‥」

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