《MUMEI》 「あー……またか……。」 グレイドはしまった、とでも言う風に、額に手を当てた。 俺達の前に姿を現したのは、一匹の黒い狼。 いや、二匹か?! その狼、体は一つなのだが頭は二つ。 「久しぶりだな、グレイド。」 しゃ、しゃべったぁ?! どうやら人語も操れるらしい。 「そいつは誰だ?」 もう片方の頭が、グレイドに尋ねた。 狼はあからさまに俺を警戒している。 「こいつか? こいつはクラウドだ。 別に怪しい奴じゃ無いから安心しろ。」 別にって……。 「とは言っても分かっているよな、グレイド。 この家の仕来たりを。」 正面から見て、右側の頭が愉快そうに笑った。 「分かってるよ……ったく面倒くせぇ。 だから気付かれたくなかったのに……。」 前へ |次へ |
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