《MUMEI》 義仲はいつになく真剣な眼差しで、廊下の先をじ……っと見つめていた。まるで、なにかの気配を捕らえようとしているかのように。 「…どうかしたの?」 不思議におもって、わたしが彼に尋ねたのと、ほぼ同時だった。 −−−グイッ! 「ぐえッ!?」 突然、義仲がわたしの襟首をつかんで、隣にあった空き教室のドアを開き、その中へ引きずりこむ。わたしたちの身体がまるごと室内に入ると、義仲はすかさずドアを閉じた。まさに一瞬のことだった。 わたしはわけが分からず、気が動転してしまった。 おかげで変な声は出るわ、膝や腰をぶつけるわさんざんだ。 倒れ込んだまま、わたしは半身だけを起こす。 「いたいわね!!なんなのよ、急に!?」 このドアホっ!!と、叫んでから気づいた。 義仲が、わたしの身体の上に、覆いかぶさっていることに。 ……………………え? 義仲のきれいな双眸が、すぐ目の前にある。 その輝きに、胸が高鳴る。 前へ |次へ |
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