《MUMEI》

 ──静かな、屋上。




「‥聞こうか、君の話」

「信じられないかも知れないけど‥ほんとに‥」

「聞く、と言っただろう」

「‥うん」




 私は、まず前世の事から話す事にした。




「‥あのね、私達は‥昔会ってたの。小さな丘の、桜の下で‥」

「昔‥と言うと‥?」

「平安時代」

「‥平安時代‥?」

「私は花売りで、菜畑君は若君だった」

「‥コノハ‥か‥?」

「うん。それで‥」

「──待て」

「ぇ」

「前世が‥本当に存在すると思うか‥?」

「‥ぇ?」

「僕は認めない」

「菜畑君‥」




 嘘じゃないよ‥?




 菜畑君は、黄羽様だったんだよ‥? 本当に‥。




「私は覚えてる‥。はっきり覚えてるの」

「なら‥何故僕は覚えていないんだ‥?」

「‥それは‥」




 どう言えば‥認めてくれるんだろう‥。




 どうすれば‥思い出してくれるんだろう‥。

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