《MUMEI》

夜中、窓を揺らす風の音に目が覚めた。


「兄さん……ぼく、一人だと眠れないんだけれど……。」

兄さんの扉をノックする。


「……モモの部屋に行け」


「居なかったもん……なんか、上の階でガタガタゆってた、センゴクサマの階は行っちゃ駄目だから。」

氷室の別荘では三階には足を踏み入れてはいけないと最初に忠告されていた。


「……チッ。」

兄さんはきまり悪そうな舌打ちをして扉から現れる。



「散歩でもしよう」

兄さんの散歩は動物を連れるものと同義語だと早くに気付きたかった。
兄さんにとって散歩も自由、捨てるのも自由という訳である。

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