《MUMEI》

◇◇◇




『君はいつも此処にいるんだな』

『好きなんです、この場所──』

『何故だ‥?』

『落ち着くから』

『──成程な』




 黄羽様は私の隣りに腰を下ろすと、一冊の書物を開いた。




『あの‥それは──何ですか‥?』

『日記だ』

『あなたが書いたんですか‥?』

『ぁぁ』

『───────』

『珍しいのか』

『はい──。‥あの、何と書いてあるんですか‥?』

『分からないのか‥?』

『私──字が読めないんです』

『‥字が、読めない‥?』

『はい‥』

『ならば‥書く事も‥』

『‥‥‥‥‥‥‥』




 私は、小さく頷いた。




『では──教えてやろう』

『ぇ』

『書の読み書きを、お前に』

『いいのですか‥?』

『ぁぁ。また明日──此処で会おう』




◇◇◇

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