《MUMEI》

気付けば、学校中がそのニュースの事で持ち切りだった。授業中はともかく、休み時間になると、必ず耳に入ってきたのだ。

自分達が住む街で起きた奇怪な殺人事件。
騒ぎ立てるのは仕方がないだろう。

皆それぞれ、自分達の意見を言い合い、中にはありもしない噂まででっちあげようとする者もいる。

ただ、全て共通する言葉は

『吸血鬼』


皆この西洋の妖怪の虜になっていた。


「でもさ〜、普通吸血鬼なら、若い、しかもベッピンな女の血を吸うんじゃなかったっけ?」

加奈子が一人席に座っていると、窓際に数人、たむろしている男達の会話が聞こえてきた。

「うわ〜、それ俺も吸ってみたいかも〜!」


アホか…


ゲラゲラ笑いながら喋る彼らに呆れてしまう。

「お前が吸いたいのは血じゃなくて、もっと別の場所だろ?」


お前らキモいし…


「まぁよ。」
「じゃあこの吸血鬼は女の血じゃなくて、男の血が良かったんだな〜?」


だから、そんなの存在しないって。ただのとち狂った人間の仕業だって。


「げぇ!マジかよ〜。だったら血の前に、ケツの心配した方がよくね?」
『ギャハハハハ!!』


全く…
馬鹿ばっかりだ。


「お待たせっ!帰ろっか」
ようやくトイレから戻って来た美雪に肩を叩かれた。

いつの間にか、男達のくだらない会話に集中してしまっていた加奈子は、それにビクついてしまった。

「どした?」
「ううん、何でもない。」
加奈子は鞄を持つと、美雪に笑顔を見せた。

「帰りますか!」

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫