《MUMEI》
Episode1-4
昼休み、雅也は一人屋上にいた。屋上はよく2人が来る場所で、恰好の隠れ家であった。
たまたま鍵が壊れているのを見つけて以来よく2人で過ごしていたのだ。
しかし今日は2人ではなく、一人。気分的に教室にいる気にはなれず、昼休みのチャイムと同時に屋上に来たのだ。
ポケットの中では携帯が小刻みに振動し連絡が来ていることを示していたが出る気にはならなかった。
無意味にフェンスに身体を預け昼食を食べる分けでもなく、雅也はただ空を見上げていた。



一方雄斗は教室で美佐に捕まっていた。
雅也が居ないことに気付いてすぐ、電話やメールを送ったものの返信が無く、探しに行こうと教室を出ようとしたところ、ちょうど購買に行って教室に戻ってきた美佐とその友人の美佳に捕まり一緒に食事をとっていた。
時折携帯を気にするも雅也からの返信は一行に来る気配はなかった。
話をしながらも携帯を気にする雄斗に

「なにー?そんなに携帯気にするってなんかあるの?」

「あ…いや、違うけど……」

美佳の言葉に慌ててどもりながら答えると、美佳はニヤリと笑い

「さては、恋人だな?」

からかうようにそう言った。
すると美佐が笑いながら

「なに言ってんのー?そんなわけないっしょ」

美佳の言葉を否定した。

食事を終えても美佐は雄斗を離そうとはせず、なんでもない世間話を長々と聞かされた。
結局、そのまま昼休みは終わり、すぐに先生が来てしまったため、雄斗が雅也を探しに行くことは叶わなかった。


午後の授業が始まっても、雅也が教室に帰ってくることはなかった。
そして雄斗の携帯も雅也からの連絡を知らせることはなかった。



授業が終わり、帰りのホームルームが終わった頃に雅也は教室に帰ってきた。
雄斗は雅也を見つけすぐ声をかける。
しかし聞いてもらうことはおろか、顔を見てもらうことさえ不可能で、雅也なにも口にする事なく教室を出て行った。

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