《MUMEI》

「みんな‥?」

「うん。きっとそう」

「───────」

「‥ぁ‥ごめん‥。さっきは大声出して‥」




 私が頭を下げると、菜畑君は、ふっ、と笑みを漏らした。




「──意外と肝が座っているんだな」

「──ぇ」

「───────」




 菜畑君は、少しだけ笑っていた。




「菜畑君?」

「面白い」

「面白い‥?」

「変わっているな、君は──」

「‥‥‥‥‥‥‥」




 返事に困っていると、




「此花」




 不意に、菜畑君が私に呼び掛けた。




「もし君が──どうしても僕の記憶を取り戻したいのなら‥好きにすればいい」

「好きに‥?」

「但し──僕が思い出せるかは分からないけれど」

「いいの‥?」

「──君みたいな人間は正直苦手だけど‥そのまっすぐな所は嫌いじゃない」

「菜畑く‥」

「さて‥教室に戻った方が良さそうだな」

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