《MUMEI》
驚くべき方向音痴
エイミーが引越してきた翌日は、燃えるゴミの日だった。


いつものように起きてゴミ出しに行く俺の耳に


[エイミーそっちは玄関じゃなくてトイレだ!]


隣にいるアルフの叫び声が聞こえた。


(あり得ないだろ…)


このアパートは普通のワンルームだ。


部屋から真っ直ぐ行けば、普通に玄関がある。


(それをどうやれば、わざわざ曲がってトイレに行くんだ?)


疑問に感じながらも、俺は普通にゴミ出しに向かった。


[俺もゴミ出しに行くから待ってろ!]

[大丈夫よ兄さん]

[ダメに決まってるだろ!]


その後エイミーが俺に追いつく事は無かった。


[悪いけど、ゴミ出し、今後はエイミーと行ってやってくれないか?]


朝から疲れた顔をしたアルフが俺の部屋を訪れ、頭を下げた。


[…頼に頼んだらどうですか?]


一応、俺は忍との会話が気になっていた。


(頼も喜びそうだし)


しかし、アルフは首を横に振った。


[頼は確か、…朝弱いだろう? 登校位なら大丈夫だけど…]

[…わかりました]


アルフの説明に俺はすぐに納得して頷いた。


(仕方ないよな)


このアパートのゴミ回収時間は他より早かった。

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