《MUMEI》
読めない話
青年教師は幾分抑え気味に、なにしてんですか…?と尋ねてきた。その声が震えていたので、なんとなく恐ろしくなる。

「こ、これは……そのぉ……」

真っ赤な顔で、わたしが言いよどみながら答える脇で義仲が顔色を変えず、野暮だな、とサラッと言った。

「こんなところで、女とヤることっつったらアレしかないじゃん」

青年教師の顔が引き攣る。ドン引きだ。無理もない。わたしだってそうだ。

義仲の言い方は、直接的な表現は抑えて言っていたものの、言いたいことはバレバレだったから。



…………バカやろうっ!!!



金魚のように、口をパクパクさせていると、義仲がわたしの顔を見て、フッと柔らかくほほ笑んだ。

グイッと肩を抱き寄せ、耳元に口を寄せる。


そうして、囁くのだ。



「照れんなよ」



…………ホントのきちがいだ、コイツ!!



わたしはこんどこそ確信した。

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