《MUMEI》

真っ白な抜け殻になっているわたしをよそに、義仲は青年教師を振り返り、…ってことだからさ!と声を改めた。

「オイシーとこ邪魔すんなよ。川崎センセ!」


川崎………?


ぼーっとしながらもわたしは、首をひねった。

川崎なんて先生、いただろうか……。
少なくとも、1年の担当にはいなかった。


相変わらずヘラヘラしている義仲に、《川崎》と呼ばれた青年教師は、フゥッとため息をついた。

「いい加減にしてください。遊びも度が過ぎたら犯罪ですよ。その娘、嫌がってるじゃないですか」

穏やかな口調で、諭すように言った川崎先生に、義仲はアハハ!!と可笑しそうに声をあげて笑う。

「犯罪!?よく言うよ!あんたがしてきたことと比べたら、こんなのカワイイもんだろ?」

義仲に抱き寄せられたまま、わたしは眉をひそめた。

……話が読めない。

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